アジアの暮らし方について
あると助かるもの
アジア諸国の物価はおおよその場合、日本よりもかなり安い国が殆どなので、海外生活を始めるに当たりそれほど多くの身の回り品を持ち運ぶ必要はないのですが、特に必要のないもの、必要なものについて少々お話しします。
持っていかない方が良い物の代表は「家庭用電気製品」です。
こちら、乾電池で動くものは別として、プラグに差し込んで電気の供給を受けなければならない日本の電気製品は現地で変圧器を購入する羽目になります。
日本の電圧は110ボルトですが、多くのアジア諸国は日本と同じ電圧ではないからです。ヘアドライヤーやアイロン、電気ジャーなどの電気を熱に変換する電気製品は大変大きな電力を消費するため、変圧器も高価格なハイボルテージなものを購入する羽目になり、それを購入するのなら現地で新品を再度購入した方がずっと安上がりになります。
必須の品は「電子辞書」です。
PCにインストールする形のものでも構わないのですが、やはりコンパクトで持ち運びに便利な電子辞書が一番で、得に英語の辞書類は充実させておくべきです。
アジア諸国では公文書を英語で作成することがあり、その場合、会話などで使っている簡単な英語を使用することはできず、適当な単語を調べ上げるのに大変素早く便利です。
公文書を現地の言葉に翻訳してもらう時も、必ず英語書きのものを用意して、改めて現地語に翻訳する形になると思います。
また、電子辞書は乾電池が使えることも最高の強味です。
その他、国によっては使用する習慣がなく現地で手に入らないものとして、「マスク」、「眼帯」などの医療消耗品が挙げられます。
眼帯がない国では目の治療中にガーゼを目の上に固定させるために直接テープを顔面に貼りつけられる時などもあります。
あと、熱帯気候の国へ在住する方は日本で販売されている「虫よけグッズ」をいくつか用意していくと良いでしょう。
そういうものが一番必要な環境であるのにも関わらず、虫さされの薬はあっても、虫よけの薬が市販されていないところもあります。
暮らしの注意
海外で生活を始めるには、必然的に自分のレジデンスが必要です。
海外で就労する場合などは会社の寮や住居を用意される場合もありますが、どういう場合でも自分の住居の弱点をよく把握することは安全に生活をする上で大変重要なこととなります。
まずは窓のチェックです。
海外諸国の民家を見てみると、2階建てであっても、窓には必ず鉄格子が入っている場合が多いです。ガラスを割られて家の中に侵入されることを防ぐためです。
それから、玄関は特に鍵がよく閉まるかどうか確認しましょう。お風呂場に小さな窓があるのなら、その状態をよくよく確認することも大切です。
泥棒は「ここからは誰も入れないだろう」と思える開口部を使って侵入するのです。特に人目につかない家の裏側の出入り口、窓の確認はしっかり行いましょう。
都会で暮らす人は常に心がけていると思いますが、洗濯物を干す場所にも注意が必要です。
干してある洗濯物からその住居に住んでいる人の性別、人数などが把握できるからです。外に干すときはできるだけ目立たない場所に、また、乾いたらすぐに取り込むことが大切です。
また、発展途上国の民家は日本と違い、セコムのような家庭警備システムはありません。家の周囲の人にはすれ違った時などのあいさつから始まり、良い人だと思えるようなら少しずつ心を開き、自分の生活の状況などを話してみましょう。
毎日の生活の中で「いつもと様子が違っておかしい」と思える状況が発生したらすぐに助けてもらえるよう、近所の人とのコミュニケーションを大切にして下さい。
また、生活環境も周囲の人々も日本とは全く違った外国では以下にお話しするような思いがけない事故が発生してしまう場合もあります。
体験談1
Aさんは仕事の関係上、南アジアの某国への在住が始まりました。
それまで海外に在住したことがないAさんは、発展途上国への在住を大変心配していましたが、Aさんの周囲の地元の人々はみんなAさんに親しく話しかけ、Aさんを歓迎してくれました。
Aさんの住居はその街でも裕福な家庭の家のアネックス、母屋と続くバストイレ付の1室をあてがわれました。
玄関を含む部屋のカギはしっかりとかかり、Aさんがカギを掛ければ誰も部屋に入ることはできませんでした。
また、管理人である大家の方はとても親切な人でした。
Aさんはそこで貴重品を全て鍵のしっかりかかるスーツケースの中に隠し入れていました。スーツケースのカギはいつも持ち歩き、スーツケース自体をチェーンロックでベッドにくくりつけていました。
Aさんの日常生活はウィークデーは朝7時30分になると出勤し、夕刻は7時頃に家に戻っていました。休日はあまり外出せず、家の中で大家さん家族と過ごしたりしていました。
数か月たった休日のある日、Aさんは一日中殆ど外出をせず家にいましたが、夕刻暗くなってから大家さんに呼ばれ、近所の家に一緒に届け物を運んで欲しいと頼まれました。
Aさんは喜んでOKし、大家さんと2人で出かけました。その届け先は徒歩で15分もかからないごく近所の家で、大家さんの家には高校生の息子が留守番をしていたので、Aさんは部屋のカギを掛けずに出かけました。
30分ほどして家に戻ると、部屋の中にあったAさんのスーツケースは見事に無くなっていました。
驚いたAさんが留守番をしていた大家の息子さんに何が起こったのか聞いてみました。彼は泣きながら「知らない、知らない」の一点張りでした。彼がスーツケースを盗んだ様には絶対に見えない様子でした。
ただ、周囲を注意深く見まわすと、息子さんがテレビを見ていたリビングからは見えない台所の小窓が開いていて、キッチンテーブルに泥が付着していたので泥棒がどうやって侵入したか予想できたのでした。
Aさんは所持金全部とクレジットカード、パスポートを失ってしまいました。
すぐに警察に届けましたが、盗難証明書を発行してくれただけで、「戻ってくるはずがない」と決めつけて、何の捜査も行ってくれませんでした。
犯人はAさんと大家さんの行動を知っている者、家の中でもAさんの部屋の位置を知っている人、すなわち、ごく身近な近所の人であることは素人でも予想できることです。
この事故はAさんが貴重品の全てを家に置き放しにし続けたため、また、いかにも大切なものが隠してありそうな場所に貴重品をまとめて置いておいたために起こった事故なのです。
体験談2
Bさん(女性)は外資系のホテルに勤務していて、ある年からアジアの某国への転勤が決まりました。
転勤先の国は通年を通して気温の高い熱帯雨林の国でした。
勤務先のホテルは都市部にありましたが、街の中心ではなく、少し離れた郊外にありました。会社側はBさんに住居を提供してくれました。ホテルの敷地の外れにある、コテージ式の小さなアネックスの部屋でした。
Bさんの部屋は2階だったので、いつも寝るときは蚊帳を吊り、窓を開け放って地元の人と同じようにして寝ていました。
ある日、Bさんは猛烈な頭痛を感じながらもやっとの思いで出勤しましたが、勤務先で倒れてしまいました。
ものすごい高熱がBさんを襲い、Bさんは速攻で近所の病院に連れ込まれました。
医師は「風邪のための発熱」と診断し、Bさんは薬を受け取り帰宅しました。ところが、毎日薬を正確に飲み続けたにも関わらず、Bさんの症状は治まらず、返ってひどくなっていったのです。
困り果てたBさんは大きな総合病院にかかり検査を受けてみました。
何とBさんの病気は蚊に刺されたことが原因でかかってしまったマラリヤ熱でした。
マラリヤは現代では予防接種などのお陰で発病する人は殆どいないのですが、発病してしまうとかなり見立ての良い医者でもなかなか病名を判別するのが難しい病気なのです。
日本の子供たちがインフルエンザや日本脳炎、はしかや水疱瘡などの予防接種を受けているように、現地の人々も同じように子供のころからマラリヤや破傷風などの風土病の予防接種を受けています。
「まさか自分がかかるわけがない」と無防備だったBさんはそれらの病気に対しての免疫が何もなかったのでした。
こういう類の伝染病にかかってしまう可能性のある国に在住することになったBさんは南国に在住を始めた時点で地元の人に子供のころからどんな予防接種を受けているのか、確認しておくことが必要だったのです。
人生を考える
「海外在住をしたい」と思っている人に尋ねます。「どうしてその国に住みたいと思うのですか?」
この質問に「××国が好きだから」と即答できる人はその国での生活も成功に繋がる可能性も高いでしょう。
でも、「日本にいても何も楽しくないから、それだったら××国で生活した方が、興味深い楽しい生活を送れそう」などと、「日本よりもまし」と答える人はもう一度よく考えてみましょう。
確かに現代の日本の社会は大変な不景気で、各企業では給与やボーナスをカット、収入も減り面白いこともできなくなってしまっています。
でも、日本には外国が真似しようとしても絶対にできない、素晴らしい部分もあるのです。
会社に就職してしばらくすると、自分が所属する部署よりも、知り合いの所属している部署の方がずっとよく見えてくるというケースはかなりあります。
客観的に見ると、自分が属する部署も、知り合いが属する部署もそんなに大差はないのです。これこそ「人の畑は良く見える」ということわざ通り、今いる自分の境遇のよさが見えずに悪いところばかりが気になり、人の境遇がうらやましく思えて仕方ないのです。
こういう気持ちで海外在住を始めたら、今度はその国でも同じことになり兼ねないでしょう。その国の嫌な部分が見えてきたら、また他の場所が良く見え始めるのです。
そんな自分にならないように、他を見渡す前に自分の周りをよくよく見渡すのです。それでもまだ外国の方が良く見えるのだったら、海外生活をスタートしてみるのもよいかと思います。
ただし、諸外国人から見た日本という国は、誰もが一度は訪れてみたいと思える素晴らしい国、できるものならば国籍を捨ててでも在住したいと思えるあこがれの国であるということを念頭に置いて、もう一度今の自分のいる境遇をよく見つめ直してみましょう。